写真−1 手術室における施工状況
最近、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)をはじめとする環境汚染菌による院内感染に対して医療従事者の関心並びに社会的関心が高まってきており医療分野では多くの感染経路に対し、多種多様な対策がなされている。
フジタでは建築の分野からこの院内感染対策の支援を目的とし、院内環境の清浄化を目指した内装材の開発に着手、医療機関への実態調査や既設医療施設での実地試験を重ね、医療現場の要求に呼応した「院内感染対策用内装システム」を開発した。

図−1 院内感染対策用内装システム構成図
従来の床、壁、天井に使用されている内装材では環境汚染菌に対する増殖抑制効果(抗菌性)はもちろん、院内で行われている過酷な消毒・滅菌(アルコール、ホルマリン等)に対する耐薬品性に乏しく、付着した血液等の汚れが落ちにくいなどの問題があり、その改善が求められていた。この「院内感染対策用内装システム」では床、壁、天井を高い「抗菌性」、「耐薬品性」、「汚れ除去性」という機能を加えた内装材(ビニールクロス、内装用塗料、塗床、床用クリヤーコーティング)で構成し、家具や設備機器、手摺等の細部にも表面処理(クリヤーコーティング)を施し、さらにはホコリ溜りとなる巾木部分に新たに開発したサニタリー工法を取り入れ、清浄な院内環境を創出する。

図−2 院内感染対策用内装システム概念図

表−1 院内感染対策用内装システム基本構成
ビニールクロス
従来のビニールクロスの構成の上にさらに無機質銀系抗菌剤をコーティングした透明フィルムを積層している。これにより耐薬品性、汚れ除去性に優れ、高い抗菌性を有する。
内装用塗料及びクリヤーコーティング
水生反応硬貨型樹脂に無機質銀系抗菌剤を配合した特殊塗料。水生反応硬化型樹脂は、低臭でなおかつ強固な塗膜をつくる。この強固な塗膜が、高い耐薬品性、汚れ除去性を可能とした。下地処理におけるシーラーにも抗菌剤を配合しており塗膜に傷等がついた場合においても、安定した抗菌性を発揮する。
塗床
無機質銀系抗菌剤を配合したエポキシ樹脂系複色塗床材。抗菌性等はもちろん耐磨耗性、そして耐衝撃性に優れる。色調は複色を成し、意匠性に優れ、また低臭な塗床材である。
床用クリヤーコーティング
水生反応硬化型樹脂に無機質銀系抗菌剤を配合した床用コーティング材。強固な塗膜をつくり、低臭でしかも施工が簡単なため張り床、塗床のメンテナンス材として最適な材料である。耐久性は通常のワックスに比べ数段優れている。
※以上の内装材は特殊な施工方法を必要としない。
塗床サンタリー工法
R面木と特殊巾木の構成により塗床をシムレスで立ち上げている。また、材質がフレキシブルなため不陸のある下地や壁でもスムーズな施工が可能である。